僧侶が絶滅した世界(完)

いらっしゃいませ
priest cafeにようこそ
いつもご来店ありがとうございます

なんだか勢いだけで
書き始めてしまったこのシリーズですが
いよいよ最終回を迎えます

どんな最後を迎えるのでしょうか？
priest cafeだったところがオープンです

■ 第一話

■ Part２２：ベホマが治せないもの

デズリンとの闘いの後３週間
わたしはベットの上にいた
鎌で切り裂かれた大きな傷は致命傷だった
綺麗な世界に何度も行っては
真っ暗な世界に戻ることを繰り返していた
死がそこに存在していたんだと
後から知ることになる

とても長く眠っていた気がする
半年ほど経っていたと勘違いしていた

黒い世界、赤い世界、黄色の世界
この３つの世界を
長く行き来していた気がする

黒い世界では黒い人影が
わたしを襲ってきた
赤い世界は暑くてとても苦しかった
黄色の世界はわたしを包んでくれた
そしてまた黒の世界…

僧侶が全盛だった時代
誰からも愛され必要とされていた
でも今は僧侶は必要とされない世界
そんなわたしを象徴するかのように
四肢が動かない状態で
わたしは不自由にベットで横たわる

旅芸人にもスパにも賢者にもなれなかった
デズリンというデスマスターとの闘いに傷つき
黄泉の国の境をを彷徨った…
ここが彩度が高くてとても綺麗な場所

それは生きる辛さを体験した事への
最後のご褒美かもしれない

意識が戻ったわたしは
肉体は筋肉が衰えて
立つ事もできなくなっていた
人間の肉体とは本当に脆弱なもので
たった３週間昏睡しただけで
筋肉は痩せ衰える

普通であればリハビリに
数ヶ月も要する状態…
わたしは少し動く右手で
自身にベホマをかけた…

体力と肉体を治癒できるこの魔法は
わたしの身体を元気だった頃に
一瞬で戻してくれた

そんな便利ですごい魔法…ベホマ
でも治せない傷もある

『それは心』

傷つき疲弊し恐怖で満ちたた心は
ベホマでは癒すことはできなかった

病は気から…
それは古くからそう言われている…
心の健康は肉体の健康を司っている
そんな心を治せるのは
自身の考え方でしかなかった

…わたしは気がついた

そう…
わたしはやっぱり僧侶なんだと気がついた…
もう他の職業の真似事はやめよう

いつしかわたしは
ドルワームの黒点と呼ばれ
他国から恐れられる賢者になっていた

『わたしはやっぱり僧侶』

ブーメランも弓も捨て
棍を持った僧侶として
わたしは病室を飛び出したのだった

■ Part２３：固定概念を捨てる

わたしは考え方を変えた
盾とスティックを常に持っていたわたし
前線で攻撃をしてくれていた仲間とは違い
自身は安全なところに身を置いて闘っていた

今のわたしは違う…
両手で棍を握りしめ
隙あれば敵を直接叩く僧侶になっていた

一人で世界を彷徨った…
詠唱速度は
棍を持っていても７%早くなった
ガード時に早読みができる様になった
今までは盾ガードだったが
武器ガードができる様になった

以前はターンを貯める事だけを考えていたが
自身でも攻撃に参加できる様になった
これは最後に神が与えてくれた能力だった

これまでスティック以外
持った事が無かった
攻撃をしている自分自身が
なぜか新鮮だった

わたしは
棍を抱き抱えて眠りについた…
明日はどんな冒険が待ってるんだろうと…

■ エピローグ

わたしは目を覚ました
そして最後の僧侶はこの世界から消えた

わたしは８年間も眠りについていた世界
そこに生きた８年間
１４，０００時間を過ごした世界
その多くを僧侶として過ごした日々
多くを学び多くを得て…そして失った…
でも…その生涯はとても幸せだった

ふと気がつく…
目を覚ました世界でも
わたしは僧侶だった

命を救う魔法は使えない
でも僧侶のような職業

後衛としての職業について
前線で闘う者を陰で支え続けている

前線で傷つき
疲弊した者たちを支える仕事

わたしは思う
仮想世界の世界の生き方は
この現実世界での生き方と
似ているのかもしれないと

僧侶らしい僧侶は絶滅した
でも…
誰かの心の中に生き続ける事ができたなら
わたしは幸せかもしれない

また生まれ変わっても
わたしは僧侶でありたい

最後まで読んでいただいて
ありがとうございました

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９９６６丁目５番地です